「お、小野くん!?」

「そんなにびっくりする?」




あ、そっか。
私と小野くんって付き合ってるんだっけ...。

昨日の夜まで考え込んでいたのに、今日の朝にはもう忘れていた。



「緊張してるの?」



小野くんが顔を覗き込んできたと同時に、首に巻かれているマフラーが垂れる。



「しっ、してないです!!」

「なんで敬語?」



覗き込むのをやめ、小野くん歩き始める。
それについていくように、私も歩き始めた。



「今から敬語なしね」

「えっ?あ、はい!
じゃなくて...うん」

「緊張しすぎ。
俺まで緊張してくるじゃん」



小野くんが笑い飛ばすのをみて、私も少し緊張が解けてきた。




「小野くんって電車通学なの?」

「ん?なんで、違うよ」

「そうなんだ。駅の近くで小野くんが来たからてっきり...」

「実はそのちょっと前から後ろにいた」



まさかの衝撃事実に空いた口が塞がらない。




「いやー、いつ声掛けようかと思ってね。なんか気持ち良さそうに鼻歌歌ってたし」



小野くんは私の顔をみて「ねっ」と同意を求める。


鼻歌歌ってたの聞こえてたなんて...!

恥ずかしさのあまり死にそうになる。