「いってきまーす」


身支度を終えた私は、鞄を持って玄関のドアを開けた。



「はい、いってらっしゃい」



お母さんはいつも送り出してくれる。
私はもう一度「いってきます」と言うと外へ出た。



「う〜寒っ」



もう冬だなぁと感じる。
明日からマフラーしていこう。



学校まで20分。
冷たい風が頬に染み込む。


ブレザーのポケットに手を突っ込んで歩いた。


でも冬の朝って嫌いじゃないんだよね。
冷たい風だからこそ感じる新鮮感?みたいなものがあってさ。

鼻がつーんとするのは嫌だけど。




犬の散歩をしているおばさんが私を見て言った。




「あら、彩花ちゃん」

「あっ、おはようございます」


ポケットから手を出す。


「彩花ちゃん久しぶりだねぇ。
こんなに大きくなっちゃって」

「えへへ。でも身長は小さい方ですよ。
158cmしかないんで」



おばさんは「あらやだ。私より大きいんだからいいじゃないの」と手首を口の前で振りながら笑った。

私もそれにつられて笑う。



「それじゃあね、気を付けていってらっしゃい」



おばさんがそう言うと、さっきまでじっとしていた茶色の柴犬が吠えた。



「いってきまーす」とおばさんと犬に手を振り、私は前を向き歩いた。



今日はいつもより早く家から出たもんね。

普段は知ることのない時間って楽しい。



小学生の頃、町を探検したみたいにワクワクしていた。



昨日、優奈と美紅と別れた駅までやってきたところで、横に誰かが来たのがわかった。





「あ、やっぱり」




「え?」と右を向くと、小野くんが私に笑顔を向けていた。