「あの、私失礼します」




この人なんかおかしいよ……。
もしかしてナンパ!?


……そんな訳ないか……。
とにかくこの人から離れよう。



そう思って足を動かそうとすればパシッと腕が掴まれてその場から動けなくなる。
私の手を掴んだのは勿論この変な人な訳で……。




「なんですか……?」

「ごめん、君みたいな子に会えた事が新鮮で本当に嬉しかったんだ……」




言っている意味は理解できない。
でも、男の人は凄く哀しそうな顔をしている。
そんな顔を見たらこの手を振り払うことが出来なくなる。




「少しでいい、ここで待っていてほしい」

「え……ちょっ!!」




そう言って男の人は私の腕を離して化粧品売り場に入って行った。


……今なら逃げれる。
だけど、逃げようとしないのはきっと……。
直感で思ったからだと思う。
あの人は悪い人じゃないって。