「……」




男の人は黙ったまま俯いてしまった。
顔は見えないが完全に怒らしてしまったみたいだ……。




「本当にすみません!
えっと……どこでお会いしましたっけ……」




凄く失礼なことを言ってるのは分かってるけど……。
今は一刻も早く思い出さないと……。




「っぷ……もう限界!!アハハハ!!」




な……。
何か凄く笑ってる……。
もしかして怒りを通り過ぎて笑いに変わってしまったのだろうか……。


この状況をどうにかしないといけないがどうしていいか分からない。
私は呆然と笑う男の人を見つめる。




「ごめん、実は会った事はないんだ」



ようやく笑いが治まったのか男の人は私を見ながら話してくれる。
だけどそれは意味が分からない事だった。
会った事がないのに何故この人は『僕の事を知らない?』なんて聞いてきたの?




「あの……」

「ふふっ。君みたいな子がいるなんてね?
僕もまだまだかな?」




男の人が言っている意味が分からない。
でも目の前の人は嬉しそうに顔を緩めている。