倒れてはいないけど……倒れそうになった所を受け止めてくれた。
…橘部長が……。
……なんか抱きしめられてるみたいで凄く……恥ずかしい!!



「す……すみません、ありがとうございます……」

「……」



橘部長は私をそっと離す。
そして、再び私の目を見てくる。




「……どこも怪我はしていないか?」

「あ……はい、大丈夫です……」

「……そうか」




私が返事をすると橘部長はクルッと向きを変えて口紅と向き合っていた。


……もしかして……。
さっきの『大丈夫か?』って私を心配してくれてたって事?
それにあの伸ばされた手は……。
私を起こすため……?



「泰東、大丈夫なら仕事を再開するぞ」

「は……はい」




橘部長の言葉で私は急いで仕事に取り掛かる。


確認は出来なかったけど……。
橘部長は私の事を心配してくれたんだよね……?


……案外……優しい人なのかな……?