そして翌日



オフィスで仕事をしている私。
でもソワソワして仕方がなかった。



だって今日は佐藤せんぱいが辞表を出しに来る日。
いつ来るか分からないけど……仕事そっちのけで扉を見る。



その時、ゆっくりと扉が開かれた。
私は思わず立ち上がってしまう。




「夏香?」




皆の視線は一気に私の方に向くが私は口を開く事なく扉から入ってきた人だけを見つめていた。
不思議に思ったのか皆も私と同じ所に視線をやる。




「佐藤先輩」

「佐藤……」




皆は思い思いの顔で彼を見る。
佐藤先輩は申し訳なさそうな顔をしながら橘部長のデスクに向かっていた。




「部長……これ……」

「……」




差し出された辞表を受け取ることなく橘部長は佐藤せんぱいを見ていた。
そしてその視線は私に向き私の名前が呼ばれる。



私はゆっくりと歩きだし佐藤せんぱいの方に近づく。
佐藤せんぱいも体を私の方に向けてくれた。
でも……目を合わせてくれようとはしなかった。