「お前は誰かを疑う事が心苦しいんだろう」

「っ……」

「今まで一緒に働いてきた仲間、確かにその通りだ」




橘部長の低い声は私だけではなくここにいる人たちみんなに届いているだろう。
皆の息遣いの音だけが部屋に響く。




「だがな……仲間だからこそきちんと向き合うべきなんじゃないのか?」

「仲間だからこそ……?」




私はそっと呟く。
その言葉の意味はよく分からない。




「そうだ。
仲間だから疑わない、そんなのは優しさでも何でもない。
このまま今回の件をあやふやにすれば会議を妨害しようとした奴はまた同じ事を繰り返すだろう」




橘部長の声が私の頭に降りかかってくる。


また同じ事を繰り返す……?
今回のような事があればまた皆に迷惑を掛けてしまう。
それは絶対に駄目だ……。


私はゆっくりと顔を上げる。
1番に目に映ったのは橘部長だった。


橘部長は私を見つめ力強く言い放った。