『……我はナ。
姫ガ聖林の人間ダッたこトヲ忘れタコとは無い。』
っ……
『聖林ガ、罪のなイ者達ニマデ
危害をおよボシタ事も忘れテハいなイ。』
『ソレを許スコとも我にハ出来なイ。
我ハ皆を統べル責任がアリ、
一族ノ当主とシテ、家族トシて皆を想ッテいルカら。』
「そうだよね…やっぱり。
私だって燈兜の立場だったらそう言うし
当たり前だから、」
『ダがな』
口が勝手にペラペラと動いて
燈兜の言葉を遮る。
至極当然の当たり前の事で
私だってそう思うであろう真っ当な考え。
だから、私のことは大丈夫だと、言おうとしたのに。
「っ!」
強い口調で、遮られる。
『ソレが姫ヲ認めナイコとにハならなイ。
姫の実力モ、考エモ。
我は認メてオルし当タり前ノ事ダったダロう。』
妖の中には本当に闇に堕ちた者もいるし、
むしろ自分たちの方が人間達には珍しく感じられるだろうから、と。
幼い頃からそれが使命と育てられていたのだから
妖を滅するのは当たり前で、
自分たちを滅することなくここにいてくれることは
幼い頃の考えを否定していることにもなるのに
ここにいる姫は、本当に強くて、優しくて、正義感のある人だと。
そう優しく微笑んで頭を撫でてくれた。