早退すると波崇達にメールをし、誰にも会わない
様に廊下の隅をせっせと澪は歩いた。

らしくない。そんな自分と向き合うのが嫌…。
女性が怖い…こわい…キモチワルイ…自分自身…

考えれば考える程、気持ち悪さしか思えなくて
吐き気も寒さも今じゃ慣れてしまった。

「大丈夫か?」不意に聞こえた声に驚き、澪は顔を
上げると見慣れない顔に少しだけ戸惑う。

誰?と先程までの自分を隠す様に冷たい瞳を目の
前の男にそのまま返した。

「田渕爽悟。君もC組やんな?」真新しいスーツ
を少し着崩して、ネクタイも緩んでいる。

そういえば…新しく副担任が来ると言ってたっけ?
どうでもいい記憶を隅にやると、澪は彼の脇を
すり抜けていくように歩くペースを速めた。

「なーんや、無愛想やなぁ」そんな台詞に若干、
反応してしまった自分がいて更に自己嫌悪。

黙ったまま、澪は爽悟の脇を通り過ぎていった。


「澪…?」校門の前に波崇がいた。
鞄片手に丁度、登校してきた様だ。

「…無理、するなよ。何かあったら言えよ」波崇は
皆がする様に澪の頭に手を置いた。

澪は波崇に顔が見えないように下を向いていた。

「大丈夫だ。」それだけ言うと、何事も無かったか
のように波崇は歩き出した。