教室へは向かわず、澪は屋上のドアを開ける。
今日は始業時間が遅いせいか、他の生徒もいた。

数学担当の女性教師、佐倉も澪に用があった様
で肩を叩いて、用件を伝えると出て行った。

「澪、おはよ」後ろから誠が飛びつき、よろけたが
咄嗟に誠が身体を支えてくれた。

「あ、ありがと…」普通に言ったつもりだったが、
澪の声はうわずって、震えている。

キモチワルイ…。
母の様な大人の女性に触れられると何故か震えが
止まらなくなって、自分らしくない。

寒気がするのに汗が出て、パニックになる。

「…澪…その傷、」誠の声が聞こえ、慌てて腕の
傷を隠した自分がいた。

昨日、殴られ過ぎて青く腫れ上がった腕は一部、
血が出る程だった。

「っ…転んだだけだよっ!」澪は言った。

大丈夫だからと答え、澪は肩を抱えた誠の腕を
払って、屋上のドアめがけて飛び出した。

途中、音緒とすれ違ったが何も考えないで
一目散に階段を降りていった。