重い足を引きずり、澪はぼろぼろのアパートに。
「ただいま、お母さん」冷たい声だった。

唯一灯りがついているリビングに母の姿はあり、
澪の姿を捕らえるなり、物を投げつける。

そして、短い何かの棒を澪に振りかざした。

咄嗟に顔を庇ったが、母は容赦なく殴り続ける。
鈍い音と母の荒い息遣いと罵声。

「お母さん…っ」澪の悲鳴が届いたのか、母は殴る
手を休め、覆い被さる様に澪の上にきた。

「澪…ごめんね…」そう言って、荒々しく頭を撫で
澪を抱き締めると、口から首へとキスをした。

先程とは全く違う、優しい言葉と仕草で母親は
澪の身体を求め、澪はただ時が過ぎるのを待つ。

一段落すると母はシャワーを浴びに部屋を去り、
澪は母の為の生活費を置いて、部屋を出る。


春だというのに外の風は冷たくて、いくら男子の
制服を着ているからといっても寒かった。

身体中の痛みが生きている実感を与えた。
そうじゃなきゃ、苦しくて死にそうだった。

死にたい訳じゃないけど、生きたくもなかった。