春人が入院したのは高等部に入る少し前だった。

膝が痛むと病院へ行き、そのまま入院した。
『骨肉腫』春人の兄から聞いた言葉。そして、
腫瘍が発見された左膝を切断すると言われた。

僕は死なないと力強く言った春人に波崇は逆に、
救われたのかも知れない。

澪の提案で毎週、金曜日に春人の病院へ行くと
決めて、もう3年が経つのだろう…。

「再発も無いから、退院出来るんじゃないかな」
暮れていく陽を見ながら、春人が言った。

それを聞いて、はしゃぐ澪の横で勿論だと波崇は
言って、噛み締める様に頷いた。


病院を離れ、途中まで同じ道を帰る。
また明日な、と別れの台詞が澪には辛かった。

「…澪、どうした?」ほんの少しだけ、悲しい目を
見せた彼女を音緒は見逃さなかった。

「ん?何が?」笑って誤魔化されたが、余計な詮索
はせずに首を振り、澪の頭に手を置いた。

また明日な、と音緒は髪をぐしゃぐしゃにすると
2人は逆方向に向かって歩き出した。