澪は授業中だった誠を連れ出し、校門へ向かう。
中等部からの編入生だった青木誠。
似たような境遇にあったからか、すぐに仲良く
なり、いつの間にか一緒に行動していた。

誠も進路は決まったらしい。

「留学?」音緒と澪が声を揃えて言った。

会社を継ぐ為、留学するか、大学に行きながら
親の会社で親の補佐をしていくか。

その選択肢を与えられているのは波崇も同じだ。

「こうやって、らしくいられんのも今だけやな」
誠が何の気なしに言った台詞は少しだけ、4人
の心をチクリと刺した。

卒業すれば、親の造り上げた道を進むだけ。
それに拒否という逃げ場はなく、ただ真っ直ぐに
決められた道を進む。

そんな境遇が彼らにはあった。

「あっ、もう4時じゃん!
今日は春んとこ行く日じゃんかぁ!!」
突然、澪が声を上げて目を光らせた。

相変わらず、子供っぽい。と小さな音緒の呟き
は聞こえなかった様で、3人は気まぐれな澪の
ペースに合わせて、気付かれない様に笑った。