泣き疲れたたのだろう、眠ってしまった澪に布団
を掛け、父は廊下に出ると爽悟と目が合った。

生意気言ってすみませんと頭を下げた爽悟に父は
同じように頭を下げた。

「お陰で目が覚めました。俺はあの子のことを
何も見ていなかった…いつの間にか、大きく
なっていた背中に正直、驚きました。
まだまだ子供だと思っていましたから…」安心した
ように息を吐き、父親は優しく笑った。


仕事で澪の父は帰り、爽悟が病室に戻ると澪が
起きて、大きく背伸びをしていた。

「…さんきゅーな、爽悟」目が合って、澪が少し
照れ臭そうに視線を外して言った。

「え…?何も聞こえんかったわ、もう一回」
わざとらしく爽悟は澪の顔を覗き込み、言う。

「っ…もう絶対言わねぇーよ!バカ」恥ずかしそう
に澪は枕を投げつけ、お互いに笑った。

ほんの少しだけ、爽悟なら何か変えてくれるかも
知れないと澪は思った。
少しだけ…このバカ教師が格好良く見えた。