「俺…大丈夫だから」澪は冷たい声で言い捨てた。
これ以上、感情を出せば抑えられない気がして
それが嫌だった。

爽悟を避け、まだ痛む身体を引きずった。

「心配されたくないなんて、そんな格好良いこと
考えんなや!」歩き出した澪の手を掴み、1枚の
白い紙を握らせた。

「何かあったら連絡せぇよっ」それだけ言うと、
爽悟は黙って澪の背中を見送った。


爽悟から貰った番号の書かれた紙をポケットに
押し込み、母のアパートまで身体を引きずった。

「おかえりなさーい、お嬢さんっ」明るい声とは
裏腹に強い力で腹を殴られ、思わず力が抜ける。

アパートの手前で取立てのヤクザが張っていて、
見事に嵌められた。人通りの少ない路地裏に引き
込まれ、思い切り突き飛ばされた。

「払って貰わないと困るんだよねー。俺らも慈善
事業でやってる訳じゃないからさ」リーダー格の
男が言うと、片方の男が容赦なく蹴りつける。

「高校生だし、それくらい分かるよねぇ?」男は
穏やかに言うが、手にしていた棒を振り下ろす。

大人2人で休みなく、澪へ暴行を加えられる。

「可哀想だねぇ、母親のせいでこんなんされて」
男の言葉に澪は抵抗を試みるが、呆気なく殴られ
力無く地面に叩きつけられる。

「次は殺しちゃうよ?」男は前髪を掴み、澪の顔を
思い切り蹴ると、もう1人を連れて車に戻った。