しかし、母は会社の不祥事を背負わされ、辞職。
関連企業にもその話は流れ、なかなか次の仕事も
決まらず、母は堕ちていった。

そのうち、怒りは暴力で兄へと向けられた。
学校の関係で父の元へいた澪は知らず、2つ上の
兄からの話で知った。正直、分からなかった…

「…3人一緒に暮らすって言ったんだ。お母さん
が落ち着いたら…昔みたいに暮らせるから…」
澪は肩を上げて呼吸をした。

「朝に…連絡がきたんだ。やっぱりごめん…って
それが最期だった」言葉を紡ぎ出すのが辛い。

嫌な予感がして、駆け付けた時には遅かった。
覚えているのは青白くなった兄の眠っている姿で
それがやけに安らかに眠っていたことだった。

自殺した兄…母は代わりに澪へ暴力を振ったが、
同時に偏った愛情を抱き、身体を求めだした。

「父さんはお母さんを恨んでるから…」澪は言う。

父に頼らず、澪は母へ生活費を渡していたが、母
は多額の借金を抱えていたらしい。

「昨日は金貰って女とヤったら、男に殴られて
ヤられそうになるし…今朝は取立てに追われたし
…何かもう、どうしたらいいか分かんないよ」
思い出す度に身体の震えが止まらない。

気持ち悪さと恐怖。
血が止まりそうになるくらい、手を握りしめても
落ち着かなかった。