騒ぎが収まり、早田と爽悟は職員室へ戻る。
他の教師は3人に対する愚痴ばかり言い合って
爽悟も苛ついていた。

「青木先生もバスケやってたんですよね?」隣同士

の爽悟に早田は尋ねる。

「中等部の時、あいつらもバスケ部でしてね。
一応、全国大会まで行ってたんですよ」早田は、
少し誇らしげに話を始めた。

3年最後の大会で全国大会の準決勝まで進み、
入院が決まった春人の為に優勝すると誓った。

「優勝やったんですか?」爽悟の質問に早田は首を
ゆっくり横に振った。

「…選手の1人が大会前夜に事故に遭い、決勝の
日に亡くなったんです。それが波崇の親友で…」
そう、言葉を濁した早田。

それ以来波崇はバスケを辞め、昔のように笑う
ことも少なくなった。音緒達にも深い傷を刻み、
どこか他人と壁を作るようになった。

「本当は真っ直ぐで良い子達なんですよ…。
ただ、凄く不器用で繊細な心を持ってるが故に
周りと壁を作ってしまう……」早田は話す。

爽悟は黙って、そんな早田を見つめていた。