次の日、澪の姿はなく、誰にも連絡が無かった。
心配から朝から波崇は苛立っている。

「朝から騒がしいなぁ」波崇の機嫌を逆撫でする
ように副担任の爽悟が廊下に立ち塞がった。

「…佐々木澪はどうした?」ヘラヘラしていた爽悟
の表情が一瞬曇り、波崇の苛立ちを更に煽った。

鞄を落とし、爽悟の胸ぐらを掴んだ波崇。

「お前何なんだよ…いちいち腹立つ。」壁に爽悟
の身体を押し付けて、低い声で唸った。

その様子を見た生徒が他の教師を呼んだらしく、
早田を含めた何人かの教師が2人の間に入った。

「教師面してんじゃねぇよ…!」そう言い捨てて
歩き出した波崇の前に、早田が立ち塞がる。

「波崇!何があった?音緒も誠も!」波崇の行動
を黙って見ていた2人にも早田は尋ねた。

黙ったままの3人を見兼ねた早田はため息を
つき、波崇を押さえていた腕を離した。

「…澪がいねぇからって、何やってんだよ!!」
大人しい早田の怒鳴り声は他の教師を圧倒した。

「お前らが心配だから、澪が何もかも背負って
しまうんだろ!ガキじゃねぇだろ!」その言葉に
波崇は早田の胸ぐらを掴んだ。

「波崇!」今度は音緒も誠も波崇を止めた。

「…その通りだよ、先生。
俺は…あの時から一歩も進めてねぇんだよ」波崇は
早田から手を離すと、代わりにゴミ箱を蹴った。