「澪…!」壁に背中を預け、澪は俯いていた。

澪に駆け寄ると予想以上にやられていて、かなり
驚いた。普段、こんなにやられないのに…と。

「何があった?」そっと肩を抱いただけで、澪は
痛みから身体を強ばらせ、震えていた。

「…大丈夫っ」音緒の手を借り、立ち上がると力の
無い笑顔を向け、そう言った。


音緒のマンションへ澪を運び、次に波崇と誠にも
連絡した。気づけば澪は眠ってしまって、音緒は
起こさないように制服を脱がせた。

「音緒!」勢いよく部屋に入ってきたのは波崇だ。
誠もその後に続き、寝ている姿を見て安心した。

「…これ、喧嘩…か?」手当をしていた音緒が無数
の痣を見つけ、驚いたように声を上げる。

その傷を見て、誠の表情が一瞬揺らいだのを
波崇は見逃さなかった。

「…今朝からや、それ。昨日は腕捲ってたし」
波崇と目が合って、誠はしぶしぶ答える。

「嫌な予感だ…」眠っている澪の頭を撫でる音緒を
見つめ、波崇は呟いた。


身体が少し痛み、澪は目を覚ました。
部屋を見渡すと誰も居らず、自分の制服が
ちゃんとハンガーに掛けられていた。

澪が眠ってしまうのはいつものことで音緒が
着替えさせるのも手慣れたものだった。

少し肩が痛み、シャツを捲ってみると圧迫されて
出来た痣がくっきりと両腕に記されていた。