早退したからといって、特に何かする訳でもなく
遊び慣れた街に繰り出しても、こんな昼間から
じゃ誰もいないし、何もする気が無かった。

「ねぇ、君女の子でしょ?」慣れない女の声が肩を
叩き、制服姿の澪は少しだけ驚く。

制服でも私服でも男に思われることが多かった。
勿論、どちらも男みたいな格好をしている。
それなのに、女と見抜かれたのは少し嫌だった。

「お金あげるから、遊ぼうよ!」女は言った。

声をかけられたことはあったが、以前だったら
キッパリ断っていた。でももうどうだって良い。

需要があるから供給する。
黙って身を委ねれば、金が手に入るんだから。

「良いですよ」いつになく、感情の無い声と仮面の
笑顔を彼女に返した。


ホテルへ行き、シャワーを浴びて事を済ませる。
少し冷たい女の指が肌に触れる度、気持ち悪さが
押し寄せたが、それを上手く呑み込んだ。

痣だらけの身体を見て、彼女は喧嘩?と勝手に
解釈してくれたようで、誤魔化せた。

「…澪」艶やかな女の声を聞けば聞くほど、脳裏に
浮かぶ嫌な記憶と重なって、気が遠くなる。

感情も何も捨てきれたらと心底願っていた。