「俺達さ、最近会う機会増えたじゃん?」


唐突に切り出される、そんな話。


「まーね。Tシャツ大量ご購入の際は、ありがとーございましたー」


「……気持ちこもってねーなー」


「だって、別にあたしにボーナスがつくわけじゃないしねぇ……」


「……確かに。あ、そんでさ、とにかく」


青山の歩く靴音が、カツカツとよく聞こえて。


あたしは、自分がよーく耳を澄ませていることに気づく。


「いずみは、凄いよなぁ、と思って」


「……何が?」


本当に分からない。


きちんとかわいい奥さんと結婚して、子どもがいて、人生順調な青山に″凄い″と言われるような物は何も持っていない、あたし。


あ。


この違和感。


この間の日南子からのメールと同じ違和感だ。


″あたしは何も持っていないのに″


っていう。