「なんで謝るんですか、夢が見られてよかったです」


「……夢?」


「そう。

都会で再会して、今度こそ先輩を手に入れる、みたいな」


胸がきゅんとなる。


そんな風に、誰かに必要とされることなんて、しばらくなかったから。


「そんな……」


パッと斉野君の表情が変わる。


「あ、今日はどうしたんですか?咲子ちゃん」


「あ……旦那が、見ててくれてるの」


あんな嘘をついていたことを改めて恥ずかしいと思いつつ、一瞬迷って″旦那″と言ってみる。


「スゲー。いい旦那さんですね」


「あ、だからもう、戻らないと……」


「そっか、そうですよね。

あ、俺も謝らないと……職権乱用しました」


「え?」


「こだわりのある美容師ぶって、先輩の髪の毛をふしだらな気持ちで触りました、

ごめんなさい!」