「……でも、告るの、止めといてよかったです」


斉野君がとってもいい顔で笑う。


なんで?と聞くのは野暮な話で……。


「娘さん、先輩にそっっくり!」


……そうだよね。


あたし、バカみたい。


結婚してること、


娘がいること。



隠して、チヤホヤされたいなんて、浅はか過ぎて、もう……。


「先輩がまた俺の前に現れてくれて、あまりの変わってなさに驚いて、もう一回チャンスがあるんじゃないかとか思ったけど、ざーんねん」


「……ごめんなさい」


高校時代の斉野君を想像してみる。


あたしは知らなかったけど、きっと今みたいにかっこよかったんだろうな。


あたしが変わっていないなんて、優しい嘘に決まってる。