「折角の俺の傑作が、ぐしゃぐしゃになってます」


「あ、ははは……ごめんなさい、走ってきたから」


びっくりした。


心臓が口から飛び出るかと思った。




……キス、されるかと思っちゃった。



何考えてるんだろ、あたし。


今日、初めて会った人に。


どんだけ、欲求不満の主婦なのよ……。


「走ってきた?サンダルで?」


自分の『作品』を手直しする感覚で触れただけの斉野君は、当然だけど、至極冷静で。


そりゃ、そうだよ。


落ち着け落ち着け、あたし。


「あ……ほんと、ね」


だめー、全然駄目だ。何片言になってんの。


「ぷっ」


斉野君が吹き出す。


「面白いなー、青山さん」