あんなに怒った航平を見るのも初めてだし、


家を飛び出すなんて、勿論初めて。



……どうしよう。


スマホも、お財布も持っていない。


足元の砂を座ったまんま、ざりざりと鳴らす。




「……青山、さん?」


不意に声をかけられ、びくっとする。


お、男の人の、声だった。


怖い。


7月の夜、まだほんのりと明るいけど、ここは公園。


変質者に襲われたら……


怖くて振り向けない。


チラッと出口を確認する。


あっちまでダッシュすれば……大通りの、方まで行けば、なんとか……



……あああ!
だめ、あたし、クロックスの偽物のサンダルばき……


もともと走るの得意じゃないし。


「青山さん、ですよね?」