いつの日からだろうか…
私の中から笑顔は消えていた。

私の世界から色が消えたのと同じように、笑わなくなった。


暗いやつ
冷徹
一人ぼっち

いろいろな「あだ名」をもらったけど友達は出来なかった。

家に帰っても一人で、母は帰りが遅い。

一緒にご飯を食べることだけが共有する時間だった。

私に父はいない、幼い頃に離婚したし…。

きっと『笑い方を忘れていた』って言った方が合っているのかもしれない。


ずっとずっと…孤独。


いつの間にか彼を目の前にベラベラ喋っていた。

恐る恐る彼を見ると、すごく辛そうな顔で話を聞いていた。

まるで自分のことのように…。
本当に不思議な人。


「俺がいつだって笑わすよ、だから…だから一人なんて思うなよ。苦しいって思うと苦しくなるし、楽しいって思えば楽しくなる。そうじゃない?俺はそうだと思うんだ。だってさ…

今楽しいもん。君とこうして話すのは、俺にとって楽しい。君は楽しくない?」

「気が楽になって…笑えた」

「それが楽しいってことだよ!
あ、俺の名前、日生 光(ヒナセ ヒカル)、光でいいよ!君は?」

「日生 光…太陽みたいな名前
私は影原 美華(カゲハラ ミカ)」

「太陽とか…恥ずかしいからやめろよなぁ…でも嬉しい、ありがと」

「うん」

「よろしくな、美華!」


そう笑顔で言って手を差し伸べる君は正しく太陽だと思った。

あたたかくて優しいヒカリを灯してくれる。



日生 光…私は彼の前でだけありのままを見せられる。

彼がいるから自然な笑顔が生まれる。

彼がいるから…。



会いたいよ、光。







リリリリリリリリ…



夢が終わり、いつもの朝。

最近ずっと同じ夢を見る、
大好きな夢を。


不意に現れて不意に消えゆく
夢の中の王子様。