―夏樹said―

目を開くと、そこには今にも泣き出しそうな凜と、珍しく驚いた顔をした龍樹がいた。








『夏樹!?夏樹、わかる!?』








ぁあ、凜....わかるよ。

でも....口が動かない。





頭が回らない。








『先生よんでくる!!』

すぐ横で姉貴の声もする。








『わかるか?』
龍樹の弱々しい声もする。









....あれ、俺どうしたんだっけ。

息がしづらい。
なんだか苦しい。







ぁあ....そうか。
倒れたのか。

急に息が出来なくなって、苦しくなって。








『ヒュー....スゥ....ハァー....り....ん』

ぜぇぜぇしながら無理やり口を動かしたら、やっと言葉が溢れた。








『ん?なに、夏樹』






凜は俺の手を力強く握っていて、
その上から龍樹が握っている。









『....俺....もう....長くない』

『何言ってんの!?』


自分のことは自分が一番良くわかってる。








余命2年を宣告されてから、もうすぐ2年経つから。


最近、息がしづらくなっていたし、
体もだるかった。









『....2年て....早いんだなぁ....』







『夏樹!!』

駆け込んできた姉貴の目は真っ赤に晴れていた。





『....あ....ねき....ダメな親父....を頼む....な....晴先輩と....幸せんなれよ....ゴホッ....』


『あんたは何言ってんのよ!!あんな親父の面倒みれんのあんただけよ!!』






姉貴の目からは大粒の涙がこぼれ落ちた。



『晴との結婚式にだって....来てもらうんだがから....うっ....くっ....!』








『なに弱音はいてんだボケ!』

龍樹が俺の肩を力強く掴む。








『俺より先に生まれて、俺より先に死ぬなんて許さねぇぞ!!』



龍樹が怒鳴る。
ぁあ、喧嘩みたいで懐かしいな。








『りゅ....き。家族を....頼む....』

『....っざけんな!!』

『凜のこ....と、幸せに....しなきゃ....ぶん殴るぞ....』

『言われなくてもしてやる!!』







龍樹の涙を見たのはいつぶりだろう。









『り....ん?』

『ん?なに....な....つき?』






凜は溢れだしそうな涙を必死に我慢していた。








『この....空の下、
....どこに....いても
俺は....今この瞬間....まで
お前のこと....想っってる』










凜。




ありがとう。幸せだったよ。
お前を置いて逃げた俺のところに来てくれた。
毎日会いに来てくれた。









凜。









俺は、お前が大好きだ。