―龍樹said―

余命2年。






それが夏樹の生きられる時間。









あれから半年、時間はあっという間に過ぎた。








『タバコ』








俺はそう言って病室を出た。

あまりにも息がつまりそうで、
タバコでも吸わないと死にそうだったから。









『はぁー....』


俺は病院の中庭で、タバコの煙と盛大なため息を吐き出した。




疲れか、安堵のため息か、正直わからなかった。









震える凜を抱き締めていた俺は、
あいつ以上に震えてたかもしれねぇ。







情けねぇ話だけど、それくらい怖かった。









夏樹が居なくなるなんて、
想像したくもなかった。









季節は夏。
外は蒸し暑いけれど、俺の汗は冷や汗に近いものだった。









3本目のタバコに火をつけたとき、
『龍樹』
晴先輩の声がして振り返る。









『俺、これから仕事あるから京香の側についててやれねぇ....わりぃな』


晴先輩は俺の憧れのうちの一人。









『いや、こちらこそすいません。ありがとうございました』


晴先輩は、姉貴によく尽くしてくれてる。









『じゃぁな、しっかりしろよ、龍樹』









晴先輩は俺の肩を叩いていってしまった。








夜空には、星が輝いていた。
そこにタバコの煙を吐き出す。



『夏樹、早く目覚ませよばぁか』








病室に戻ると、姉貴が珈琲を入れていた。







『龍樹も飲む?』


『おぅ』








凜は夏樹の手を握っていた。


俺はその上から凜の手を握った。









『夏樹のが、手大きいね。龍樹は女の子みたいに綺麗な指』



『っせーな、夏樹はバスケやってたんだろーが』




『そうだね』
今日久しぶりにみる凜の笑顔に、
ホッとした自分がいた。









『あたしね、最初に龍樹に会った時、思わず夏樹?って言っちゃったの』









....あぁ、やっぱりか。




『ん....そんな気してた。でも、お前が夏樹のこと知ってるなんて思わなかったからほっといた』









『....うん....本当にそっくりだけど、全然違うよー龍樹達って』
凜は笑いながら俺と夏樹の顔を交互に見た。






『....あ?』
どうゆう意味だ....?








『そっくりだけど、二人とも違って、いいところも悪いところも、ちゃんとある』




『お前それ褒めてんの?』









ケラケラ笑う凜をこついた。









『このミサンガ買ってよかったね!可愛い』


夏樹の腕には緑、
凜の腕にはピンク、
俺の腕には青のミサンガがついている。









『そうだな』









凜はもう泣いていなかった。


弱いんだか、強いんだか。
訳のわからない奴だ。


だから放っておけないのかもな。









『....夏樹!?』



その時....









ようやく、バカ兄貴が目を開いた。