―凜said―

龍樹の話しをする夏樹はすごく苦しそうだった。
責任や罪悪感でいっぱいなんだろうな…って思った。


けど、夏樹は龍樹が大好なんだね。









『夏樹』

少し肌寒い冬の風は、
こころを綺麗に洗い流してくれるみたいで、昔から好きだった。








『ん?』


振り返った夏樹は、すごく優しい瞳をしていた。








『夏樹....もう、あたしと龍樹を置いて何処かにいかないって....約束して?』








月明かりに照らされた夏樹は、
今にも消えてしまいそうな程幻想的に見えた。








『これから先、何があっても、どんなに辛くても....あたしと龍樹は....絶対、絶対に夏樹を支えるって約束するから....だから....』



『俺はもう何処にも行かないし、何からも逃げないよ』









あたしの言葉を遮った夏樹は、
細くなった腕で、力いっぱいあたしを抱きしめた。









『前も話したけどさ、俺、凜に何も言わずにいたことすごく後悔したんだ』


あたしの目からは大粒の涙がボトボト音を立てて夏樹の肩に落ちる。








『凜の幸せ願うなんて、カッコつけてさ、呆れちゃうよな....』








『俺、自分のせいで、誰かの人生を縛りつけたくなかったんだ。』





『....縛りつけるなんてそんな....』







あたしの頭を撫でる夏樹の手を
懐かしく感じる。








『だからもう後悔しないように、精一杯生きるって決めたんだ。凜と龍樹のおかげ。ありがとう』








『ッ....』








夏樹は思いっきり笑った。
あたしの大好きな笑顔で。









夜空には、星が眩しいくらいに輝いていた。








ねぇ....神様。









どうか、どうか....









夏樹を連れていかないでください。