―龍樹said―

目の前で笑う夏樹を見ていると、
やっぱり信じられない。









確かにだいぶ痩せたし、抗癌剤治療で少し髪が薄くなったし、元々肌は白いけど、余計青白くなった。


でも....
こんなに楽しそうに笑ってるじゃねぇか....









あと半年もしないうちに死ぬなんて、
考えられるわけねぇだろ。








『冬の遊園地は寒いね!!』
はしゃぐ凜を冷ややかな目で見つめる。




『当たり前だろ、馬鹿が』



『はぁ!?....てか。夏樹と龍樹!おんなじ顔で見ないでよ!!』




は....?
俺は夏樹と目を合わせた。






『二人ともあたしのこと冷ややかな目で見てたからね!!今!!』








『....そりゃぁ双子だから仕方ねぇだろ』
夏樹は苦笑した。







『ってか!なんか乗ろうよ!夏樹も乗れるやつーっ』




凜はわざとはしゃいでる。

あいつは口に出さないし、
夏樹の前じゃ絶対泣かないし、悲しい表情は絶対に見せない。









でも本当は、毎日帰りバイクに乗る俺の背中で泣いている。




ー夏樹がまた痩せた
ー抗癌剤、すごく辛そう
ーさっき吐いてた…








愚痴をこぼすみたいに。そうやって泣く。


凜は強い奴だけど、ホントは弱いんだ。









『俺、飲み物買ってくるわ』


ソフトクリームを食べながら休憩する二人を置いて、俺は暇をつぶす姉貴のところに行った。






『ぉ、龍樹』
『今日はわりぃな。車出してもらってんのに暇させて』




『いーんだよ、弟のためだ』
姉貴は笑った。





姉貴は母さんにそっくりだ。


俺の心が揺れる。




『今度龍樹におごってもらうし!』
『....あ?』




『ねぇ、龍樹』
『ん?』





『夏樹と凜ちゃんを二人にしていいの?』
『....』






『夏樹は今でも、凜ちゃんが大好きなんだよ....?』
『知ってる....』


『....え?』


『同情じゃねぇ。ただ....今は、いいんだよ。これでいい』








夏樹はまだ凜のことを想っているのくらいわかる。



双子だから分かりに決まってんだろ。








『まぁ、凜を譲る気なんてサラサラねぇんだけどな』

『さすが龍樹』

姉貴は安心したように笑った。






『最後はどこに行くんだっけ....』




『たしか....あいつらの思い出の場所?』







俺は飲み物を買って、二人のところに戻った。