―凜said―

もう一度鏡の前にたち、最終確認。



『よし、おっけ!』









今日は夏樹が1日だけ外に出られる日。



外で待つ、
おしゃれに私服を着こなす龍樹は凄く寒そうにしていた。








相変わらずかっこい。何着ても似合う。

....うざ!!




『おせぇぞ、馬鹿』
『ごめんごめんっ』
あたしはそういいながら、龍樹のバイクにまたがった。






季節は12月。
バイクで走るにはかなり寒いけど、
冷たい風がすこし気持ちよく感じた。









夏樹は、この街を案内してほしいといった。
行きたいのは、この街だと....。




どうゆう心境なんだろ....
たったの1日。
凄く特別な1日。


それを、
あたし達が住むこの街。
夏樹が住んでいたこの街。



ここを選んだ理由は、
なんだったんだろう。
















『夏樹、もう家にいるからな』
そんなあたしの心境を知ってか知らずか、
龍樹はあたしに振り返った。

『うんっ』









龍樹の家に着く。

龍樹の家族には、ダンディなおじさんと夏樹と京香さんがいた。

このダンディなおじさんはたぶん、
お父さん。目が少し、龍樹たちに似ている。






『寒かったろ。わざわざありがとう。今日は夏樹をよろしくな』
お父さんは、にっこり笑うといそいそと部屋を出ていってしまった。





『親父は今日も仕事か』
龍樹は吐き捨てるように言った。





『大人は大変なのよ』
京香さんもあきれ顔で呟いた。








この家族が抱える問題は、きっと果てしないんだろうなー…って思う。

部外者のあたしは口を挟めないから、
黙っていることしかできないけど…









なんとなく、重くなってしまった空気を変えたのは夏樹のひとこと。








『早く行こうぜ、時間もったいねぇよ』
夏樹の笑顔に、おもわずつられて、
あたしも笑顔になっていた。









今日は、夏樹にこの街を案内する。



思い出の霞ヶ丘中学校を回ったり、
いきつけのレストラン、
小さな雑貨屋さん、
遊園地、ゲームセンター。


そして最後は…。









あたしと夏樹の秘密の場所。








『本当にこんなとこ回るの?』

『しつこい!凜、俺はこれがいいの』
と夏樹に言われてしまえば、仕方がない。








あたし達は、京香さんの運転する車に乗り込み、出発した。