―凜said―

あたしは、家に帰った。
でも、ずっとずっとぼーっとしてて、
さっきまで何をしていたのかすら覚えていなかった。



それくらい
夏樹のことで頭がいっぱいだったんだ。



未遥に電話しなきゃ...とか
龍樹に確かめきゃ...とか。
やらなきゃいけないことは沢山あるってわかっているのに...。




あたしはドレッサーの中のネックレスと写真を取り出した。




『なつ...き...』
気づけばまた、
目からは涙が溢れていた。
枯れちゃうくらい、
泣いたはずだったのになぁ....。








あたしは未遥に電話を掛けた。




«え....夏樹が!?あの、河原に...?»
未遥はありえないって感じの声を出した。



『何にも...あたし、何にも聞けなかったよ...また、なんにもわからないまま会えなくなっちゃった...』
あたしはまた一人で泣いている。








『夏樹にね、もうあたしとは戻れないって、他に好きな奴いるしって言われちゃった...わかってたことなのにね』





夏樹の気持ちがあたしから離れてることなんて、ずっと前からわかってた。
覚悟してた。






でも...期待もしてた。
馬鹿みたいな期待を。







«凜...»
未遥は言葉が出ないみたい。
また未遥を困らせちゃった。




『でも、未遥!!』
あたしはわざと明るい声を出した。







『あたし、夏樹の元気な姿見れたから...それで充分だよ!!』
まるで自分に言い聞かせるみたいに、
あたしは言った。







«そっか...。うん、凜には龍樹くんがいるもんね!明日の龍樹くんの誕生日、一緒に祝いなね»



『うん!ありがと、未遥』








そうだ。
あたしには龍樹がいるじゃないか。









もう、夏樹がいなくても平気じゃないか。









もう...
泣く必要なんてないよね...?









明日は龍樹の誕生日。