―凜said―

それから、あたしと龍樹は毎日夏樹に会いに行った。


京香さんや晴先輩が暇なときは送ってってくれたり、龍樹のバイクに乗ったり。






気づけばもう、12月になっていた。









夏樹はあたし達が行くようになってから、
元気を取り戻したと先生に言われた。




順調に行けば、1日だけ外に出られるかもしれない....とまで言われた。
だから、希望を捨てないで....と。








夏樹は毎日頑張ってる。
きつい抗癌剤治療もめげずにやってる。






あたし達は、そんな夏樹を応援してあげることしか出来なかった。








『あ、そういえばさぁ』
花瓶の花を取り替えていたあたしは、
夏樹の声に振り返る。





『午前中、凜達が来る前に未遥と陽が来てくれたんだよね』
夏樹は嬉しそうに笑った。



『え、本当!?そっかぁー、来てくれたんだね』








あの日、あたしは病院から帰るその足で、
未遥の家に向かった。




全部話す前に、あたしも未遥も大泣きした。








陽と未遥は、黙っていた事を何回も謝ってくれた。


でも、あたしも未遥達と逆の立場だったら同じ選択をしていたと思う。








未遥と陽の優しさが、
痛いくらい胸にしみた。








『陽、バスケで1年なのに、スタメン取れたんだってさ!!』
夏樹は自分のことのように喜ぶ。


『えっ、すご!!流石だなぁー、昔からずば抜けてたもんね』
夏樹も上手だったよ、バスケ。






『Wエースなんて言われてた頃が懐かしいなー』
夏樹は遠くを見つめた。




『みんなで、陽の試合応援行こうね!!』
『おう!!』








夏樹は絶対に弱音を吐かない。
苦しいはずなのに、
辛いはずなのに。









無理、してるのかな....?









夏樹と龍樹は、自分で抱え込んじゃうタイプ。
絶対に弱音を吐かない。
プライドがたかくて、頑固。








それがいいのか悪いのかなんて、
あたしにはわからない。



あたし達に出来るのは、夏樹を支えて上げること。









そんなあたし達に朗報が届いたのは、
休み時間のこと。









«凜ちゃんへ、
夏樹が1日だけ外に出ることの許可を得ることができたの!!今週の日曜日。
どこに行くかはまた、今日にでも相談してね!!
京香»








あたしはメールを見た瞬間、
スマホを未遥に投げて、



龍樹のところに全力疾走した。