―凜said―

そろそろ戻って大丈夫だよね、
っていう京香さんの提案により、
あたし達は病室に戻ることにした。








あたしと京香さんは、
病室の前に来て立ち止まった。




中から笑い声が聞こえる。







龍樹と夏樹....ちゃんと話せたのかな?






『中、はいろっか』
京香さんはドアノブを握ったままのあたしに向かって微笑んだ。









『はい』
ガラ....







『お、姉貴と凜』









あたしは並んでこっちを見ている二人を見て思った。


ぁあ、やっぱりそっくりだ。




どうしてあたしは気付かなかったんだろうね。こんなにもそっくりなのにさ。








『お前ら似すぎててきもいぞ!』
京香さんが笑いながら龍樹の肩に腕を回した。








あたしは思わず笑ってしまった。
だって、京香さんだってそっくりなんだもん。








なんか、兄弟って....家族って、温かいんだね。


一人っ子のあたしは羨ましいな。








『凜、元気だった?....って、前も聞いたかー!!』
陽気に笑い飛ばす夏樹は、
昔と何一つ変わっていないように見えた。





『こいつはいつも無駄に元気だぞ』
嫌味たっぷりに龍樹が言った。







『っちょ!?龍樹だけには言われたくないんですけど!?』

久しぶりに会った....っつっても2日か。
けど、龍樹も、いつもの龍樹であたしは安心した。







『名残惜しいけど、そろそろ帰らなきゃ』
京香さんが部屋に掛けてあった時計を指さす。




時刻は7時。
今から帰れば9時近くになってしまう。









『明日も来る』

『え?』


気づいたらあたしは、そんなことを言っていた。








『明日も、明後日も明々後日も....毎日来る。毎日、龍樹と来るよ』


夏樹を、一人にしたくないと思った。
ただ純粋にそう思った。








『でも、それ大変....』



『引っ張ってでも連れてくる』
あたしの頭をぐしゃぐしゃにして言ったのは龍樹。








きっと....龍樹も同じ気持ちなんだと思った。








『バイクなら腐るほどある』
龍樹は恥ずかしそうにそっぽを向いた。








『お前ら本当馬鹿だよな』
夏樹はそんなあたし達をみて、
苦笑した。



『毎日、待ってるよ』
そう言って夏樹は、もう一度笑った。









あたし達は、知らなかったんだ。









残り半年が....










こんなにも辛くて、苦しくて、切なくて。









儚いものだったなんて。