―凜said―

バンッ!!

扉が開いた音にびっくりしたあたしは、
思わず振り返った。









『り....りゅ....うき?』


そこには、目を真っ赤に腫らした、
久しぶりに見る龍樹が立っていた。

あたしはとっさにベッドを離れた。







『久しぶりだな....』
龍樹はそう言って、
あたしの頭をくしゃくしゃにした。








『2人っきりにしてくれねぇか?』
いつもの意地悪な龍樹の面影は
全然なくて....優しい声に戸惑う。








『うん』
あたしは、そう言って病室を出た。









外に出ると、京香さんがいた。

『お茶でもしにいく?』




あたしは腫れた目を擦り、崩れたメイクを直して京香さんと病院の中にあるおしゃれなカフェに行った。








『ごめんね、なんの前触れもなくて』
京香さんはブラックコーヒを飲みながらあたしを見つめた。



『あ....いいえ....』
あたしもカフェラテを飲んだ。





『龍樹も何も言わずに連れてきたらさ、怒り狂っちゃって。』
京香さんは苦笑した。








え....。龍樹も知らなかったの?
でも、兄弟だよね....?
なんでだろ....。







『龍樹さ、夏樹の事何も知らなかったんだよね。夏樹は、母さんのこととか色々あって荒れてる龍樹を見て、いつも苦しそうにしてた。』



龍樹のお母さんの話....。
前、聞いたことがあった。





『龍樹は優しい子だったの。あいつ、浮気現場みちゃったんだよね。』



自分の大好きだった母親の浮気....。





『それで、家族にバレて離婚。だから龍樹は、家族がバラバラになったことを自分のせいだと思ってるの。今も....』





京香さんは、そんな龍樹に何もしてあげられなかった....って、涙をこぼした。







あたしの知る龍樹は、意地悪で、人をからかうのが大好きで、俺様で....。
いつでも強気なしっかり者。








けど本当は....
苦しんでいたのかもしれない。
ずっと、自分を責め続けていたんだと思った。





『そんな龍樹を見ていた夏樹はたぶん、これ以上苦しめたくなかったんだと思う。』




やっぱり夏樹は優しい人だ。
どんなに自分が苦しくても、
ほかの誰かのことを考える人。








『京香さん....あたし....』








あと半年。
あたしが夏樹にしてあげられること....。









『あたし、龍樹と一緒に夏樹とたくさん思い出つくって....最後は....夏樹が笑顔でいられるように....2人で夏樹を支えます!!』








あたしに迷いは無かった。