―夏樹said―

顔をあげた凜は、
綺麗な顔が涙でぐしゃぐしゃだった。





『凜、ごめんね』



















1年半前の夏。


『肺癌です....余命....2年というところでしょうか....』



『は?』



体に違和感を覚え、検査したところ....
末期の癌だった。








突然告げられた余命2年。



中3の俺には、理解すらできない話だった。










俺の人生は、残りたったの2年しかない。
何をすれば後悔しない?
俺はこれからどうすればいい?



まだ15年しか生きたことのない俺は、
何が幸せなのかもわからなかった。







ただ頭に浮かんだのは
あいつの笑顔。



一生守り抜くと、自分で誓った大事なもの。

中学生のガキのくせに、なんて言われるかもしれない。




けど、本当に大好きだった。








凜には....言えない。
あいつは泣くから。
一生俺のことを忘れないでいるだろうから。









俺はあと2年で死ぬ。








本当は....ずっと生きていたい。








なぁ、どうすればいい?








凜....。








無能な俺がたどり着いた答えは、
凜の幸せを願うこと。








『本当にいいんだな』
親友の陽がこの言葉を言ったのは、
これが何回目だろう。



『俺はあいつに笑顔でいて欲しいの。俺なんかのために、あいつの人生縛りたくない。』
俺がこの言葉を言ったのも、
何回目だろう。





『せめて龍樹には言わなきゃなんじゃねぇの?兄弟だろ』




『....あいつは母さんのこともあって、大変だし....それにさ....』



あいつはすごく優しいやつだから。








『知らない方が幸せに生きて行ける』








俺は自分のせいで、誰かを縛り付けたくなかった。
俺が死んだって記憶を焼き付けて欲しくなかった。









最後の日。




いつもと変わらない、河原デート。








なぁ、凜。
今日が最後だ。
明日には、俺はもういないよ。
もうお前の涙をふくことも、
お前の笑顔を守ることも....できない。









ごめんな。









『この空の下、
どこにいたって
俺はお前のこと想ってる』









凜....大好きだった。