―凜said―

車で1時間半、
着いたのはあたしの知らない街。




高いビルの窓ガラスはキラキラ輝いている。
いかにも都会....。







夏樹、あたしの知らない間にこんなところで暮らしてたんだね。







そういえば、髪も茶色くなってたし。
格好もお洒落だった。








車は街の中心に向かって進む。




どこに向かうのかはわからない。
まぁ....たぶん夏樹の家かなんかなんだろうけど....。








でも、京香さんの車が止まったのは、
一軒家でも、マンションでも、アパートでもなくて....。









『病....院?』




目の前には見るからに大きい総合病院。


え、なんで病院?








....え?







寒気がした。
なんだか足を踏み入れるのが物凄く怖くなった気がした。






ここに....夏樹....が?
なんで....?









『いこっか、凜ちゃん』



京香さんは慣れた感じで、
たくさんあるエレベーターのボタンを押したり、迷うことなく大きな病院の中を、
振り返ることなく歩く。








その行動に、あたしは息がつまりそうだった。


ねぇ....夏樹。
どうか、あたしの勝手な妄想だと笑い飛ばして....?









京香さんはひとつのドアの前で止まった。









『中にいるよ』
京香さんは初めてあたしを振り返った。









この中に....夏樹が?









あたしは考えることよりも先に、
ドアを開けていた。









『姉貴ー、キャラメル買ってきてくれたー....』








『嘘....』









『なつ....』








あたしは目の前の現実を、
理解することができなかった。