―夏樹said―

月明かりに照らされる川が綺麗に見える。
自転車に乗る俺は、体よりも
心が寒かった。





母親のお墓参りのために、
1年ぶりに訪れた住み慣れた街。



久しぶりに立ち寄ったあの場所で
まさか....




凜に会うなんて。








あいつを見た瞬間、 思わず側に行きたくなった。




今にも泣き出しそうなあいつの頭を撫でた。昔みたいに....







何やってんだ、俺。
自分で決めたはずなのに。
後悔はないはずなのに。








久しぶりに見た凜は、
もっと可愛く、綺麗になっていた。
でも、泣き虫なところは相変わらずか?








俺は、また逃げた。
逃げまくって生きている俺が、
凜にどんな顔して本当のこと言うんだよ....





他に好きな奴いるし....
なんて馬鹿馬鹿しい嘘までついて....。








凜には龍樹がついてる。
なんも、心配いらねぇよな。








本格的な入院を明日に控えた俺は、
最後になるであろう、
この景色とサイクリングを楽しむことに没頭した。








凜のことは考えなくて済むように。