―凜said―

『龍樹くんまだでないの?』
未遥はあたしを覗き込んだ。



『どうしたんだろ?』
何回鳴らしても電話に出ない龍樹。




未遥の部屋で紅茶とお菓子を食べているあたし達。






ちょっと心配してるあたし。









『まぁ、龍樹のことだからそのへんフラフラしてるんだよ』
あたしは未遥に笑ってみせた。







まぁ、本当にそう思ってるんだけどね?
龍樹なら大丈夫だー、みたいな
根拠のない自身的な(笑)







でも、龍樹ってたぶん溜めちゃうタイプの人間だと思う。
全部一人で背負い込もうとしちゃう。


だからもし本当に何かあったらやばいって思う。




『そのうちかかってくるよ』
未遥は慰めるように笑った。








確かに。またどうせどっかで飲んでるんだろうなー、あの不良!!



あたしはスマホをテーブルの上に置いた。









『夏樹と....あれ以来会っていないの?』
未遥が小さな声で呟いた。








『会ってないよ』
あたしは絞り出すように声を出した。






龍樹と夏樹が兄弟なのかすら、
まだ聞けてないあたし。
知らない方が、幸せに気さえする。








あの夏の真実さえ。








でも....あたしは、知らなきゃいけない。
そうじゃなきゃ、
ずっとずっと、前に進めない。







例えそれが、どんなに辛いことだったとしても。

受け止めなきゃいけない。









『未遥、あたしもう逃げないよ』
あたしは再びスマホを手にとった。




『....凜?』






«プルルルル....はい、京香です。どした?凜ちゃん»
あたしは京香さんに電話を掛けた。







『お聞きしたいことがあるんですが....』


«電話でよければ....»


『全然構いません!あの....』








あたしはあと一言のところで止まった。
そして未遥の顔を真っ直ぐに見た。





逃げないって、決めた。










『日向夏樹をご存知ですか?』

«....うん»

少しの沈黙の後、京香さんは静かに答えた。





あたしの心臓がやけに五月蝿く感じる。








『京香さんの弟で....龍樹の双子のお兄さんですか?』








«........うん»

さっきよりも長い沈黙。








そうか....本当に兄弟なんだね。
知らなかったなぁ....
そりゃぁ、似てるわけだよね。
だって双子なんだからさ....。








«....凜ちゃん、明日ひま?»
京香さんは優しい声で呟いた。








『えっと.... ひまですけ....』
«夏樹に会いに行こう»









『....はい』