―夏樹said―

まさか姉貴が龍樹を連れてくるとは思わなかった俺は、心底びっくりした。



『こうなることは、わかってたんだけど....ごめんね、夏樹』

姉貴は珍しく弱々しい声を出した。







『謝んなよ、いつかは言わなきゃいけないことだったんだし....』








龍樹に知られたくなかった。
きっと龍樹は、俺が癌だなんて知ったら、
間違いなく凜をここへ引っ張ってくる。




凜がここにきたら、本当のことがバレてしまう。
そしたら、一生二人を苦しめることになる。





凜の泣く顔は見たくない。







でも。

俺のわがままかもしれない。
こんなのはただの、言い訳かもしれない。








本当は、こんな姿見られたくないだけかもしれない....。









『ごめんな、龍樹』





俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。








二人の幸せを....
凜の幸せを願うために選んだ道だったのに。








かっこわりぃ兄貴でごめんな。