-龍樹said-

眼前に広がる光景は、嫌なくらい現実味を帯びていた。



『お前....これ....どういうことだよ....』





ベッドに座っている夏樹は、たくさんのチューブに繋がれていた。








『肺癌』
答えたのは、夏樹じゃなくて姉貴だった。








はい....?が....ん?
俺の脳みそは目の前の現実を理解するには足りなかったらしい。




まったくもってわからない。









『癌....だと?』



俺は夏樹の顔を見た。








『黙ってて悪かったな』
夏樹は情けない笑顔で笑った。









『....に言ってんだよ....んで....黙ってたんだよ!?』
俺は声を張り上げた。







『お前と凜には知られたくなかった。お前が知ったら、凜をここに連れてくるだろ?』



『....』



『お前らには幸せになってもらいたか....』







『お前が苦しんでるのを知らないで幸せになんてなれる訳ねぇだろ!?』




俺以外はみんな知ってたのか。





『みんなでぐるになりやがって!!ふざけんじゃねぇぞ!!家族じゃねぇのかよっ!?最低な話だな!!』





俺は思い切り怒鳴って病室を駆け出した。









なんで....気づかなかったんだよ。








最低なのは俺なんだ。








家族なのに。




兄貴なのに。