-龍樹said-

電話を切った後、
姉貴は近くにいたらしく、10分くらいで迎に来た。





『とりあえず乗れ』





晴先輩の落ち着いた声とは裏腹に、
俺の心臓はやけに五月蝿かった。




車は、街の中心部に向かって走った。



『姉貴....どこいくんだよ?』



姉貴は俺の顔を見ただけで、何も言わなかった。



そんな姉貴の態度が、俺の心拍を余計に跳ね上げさせた。








車が止まったのは、
見るからに大きい総合病院。








病院....?
なんでだ?








『行くよ』



俺は言われるままに、姉貴と晴先輩の後ろについて歩いた。



白い床や壁、独特な消毒の匂い。
俺は昔から病院が好きじゃない。




姉貴は振り返ることなく、
まっすぐ前だけ見て歩いていた。





嫌な予感しかしねぇ....。
俺は冷や汗までかいていたくらいだ。





俺達は、
『成人病棟』と書かれた自動ドアの中に入った。




中にはたくさんのドア。
周りには患者やナース。





そして、ひとつのドアの前に立つ。





そこで初めて姉貴は振り返った。







『先に入りな』







この中になにがあるんだ....?
どうして俺はこんなに怯えてるんだ....?








バカバカしい。
ビビる必要なんてねぇ!









俺は思い切りドアを開けて中に入った。









そこには....









随分と痩せた、顔色の悪いクソ兄貴がいた。









『なつ....』
『りゅ....?』









世界はあまりにも残酷だ。