「あれはね、犬。犬だね」
「へ?犬ですか?」
「そう、安西ちゃんが来ると私にはぶんぶんと振ってる尻尾が見える。
ほんっとうに懐かれてるよね」
「いや、そうですかね?彼、誰にでもああじゃないですか?」
「わかってないな」
辻先生は人差し指を立てると、ちっちっとする。
半端ないドヤ顔を披露されながら、辻先生は続けた。
「安西ちゃんと他の先生とは声のトーンが違うね」
「ええ、わかりません」
「まあ、そうだろうな。でも、私はわかる」
「何ですか、それ」
「気を付けなよ。男子高校生なんて、あれの事しか考えてないんだから」
「えええ。ちょ、ちょっと、何を…」
私が顔を赤くして、動揺してるとそんな姿も楽しいのか、辻先生はカカカっと水戸黄門もびっくりの笑い方で笑う。