「先生、髪の毛ちょっと乱れてる。走りましたね?」
「う。バレてる」
「クスクス。先生、見かけによらずおっちょこちょいだから」
「見かけによらずって…どうだと思ってたの」
「もっとキリッ!キビキビっとしてるかと思ってました」
「それはそれは理想を壊してしまって申し訳ない」
「いえいえ」
二人して深々とお辞儀しながら、笑い合う。
久住君は違うクラスの生徒だけど、顔を合わすと会話をするし。
新入生らしい初々しさもあった。
ぴしっとしてた制服も夏休みを過ぎた辺りから、少しだけ崩れて来ている。
それもそれで可愛いけど。
「それじゃあ、先生。失礼しまーす」
「はいはーい」
手をぶんぶんと振る彼に手を振り返すと、嬉しそうにはにかんで久住君は職員室を出て行った。
ああ、癒し。
そんな私の肩をぽんと叩く人。