私に顔をぐいっと近付けると、小声で。


「あいつ、要注意な」


そうぼそっと告げた。


「はあ?」


目をぱちぱちとさせて彼を見るけど、まだ微笑んだまま。


「それじゃ、後でテストについてとか教えて下さいね」

「え?あ、はい、わかりました」


よくわからなかったけど、とりあえず頷くと山本先生は手をひらひらと振って階段を上って行った。

その後ろ姿を見つめる。


……あいつ、要注意?


って。誰?

まさか、久住君の事?


何言ってるの。
バカじゃないの。

可愛い生徒なのに、要注意って。


首を捻りながら、私は慌てて久住君の元へと戻った。