「先生、コーヒーの香りがします」
「さっき飲んでたからね」
「俺、コーヒー飲めないから羨ましいです」
「大人になったら飲めるんじゃないかな」
「そうですかね?
……早く大人になりたいです」
おっと。
まさか、久住君からこんなセリフが出るなんて驚きだ。
今を思いっ切り謳歌してる様に見えたし。
どう言葉を返そうか少しだけ悩むと、後ろからあの男の声がした。
「安西先生~!」
その声が聞こえた瞬間、私の眉間は狭くなる。
返事もせず仏頂面のまま、後ろを向く。
極上スマイルの山本先生。
くいくいっと手で私を招いている。
……授業遅れるんですけど。
仕方なく彼の元に近寄ると、「何ですか」そう冷たい口調で言った。
だけど、彼の笑みは崩れない。