「はい、オッケーです。
髪の毛。食べてましたよ?」


かくっと首を傾げながら、目を細めて微笑む久住君。
……ヤバイ、私にも耳が見えてしまった。

本当にしっぽ振ってる様に見える。

辻先生があんな事言うからだ。



羊の様なふわふわした髪の毛。
垂れた瞳が、笑った事で更に垂れて。


ふにゃあって力の抜けた顔を見せる彼に、思わず私の顔も緩む。


「ほらほら、戻らないと休み時間なくなっちゃうよ」

「先生、次うちのクラスですよね?」

「そうだね」

「一緒に行きましょうよ」

「そうか、そうしようかー」


確かに次の授業は、久住君のクラスだもんな。

それじゃあ、一緒に行くか。


私は教科書やら、ノートやらを手に持つと立ち上がった。


職員室から出る時に、山本先生が視界に入る。
だけど、目を合わす事なく扉を開けた。


久住君と並んで廊下を歩くと、彼がニコニコしながら話しかけて来る。