「あ。安西先生っ」


ん?この声は。


だらけた体を起こして、その声がした方を向く。


そこにいたのは、大量のプリントを腕の中に抱えている久住君の姿だ。


「久住君、手伝い?いつも偉いねえ」


本当に、久住君は先生からの頼まれ事を嫌な顔せずに、ニコニコとして引き受ける。
素敵な生徒だ。

だから、つい先生方も頼んでしまう。
申し訳ないと思いながら。


久住君はプリントを机に置くと

「いえ、これぐらい全然っ。職員室来たいんで!」

そうやって、満面の笑みで返した。



「職員室に来たいって珍しいね。何で?」

「あ、いや、理由はないです」

「ええ?何それ。おかしいの」

「いいんですっ。……ストップ、先生」

「え?」


ストップと言われて、素直に動きを止めると彼の手が私へと伸びる。
それは口元に触れた。


目を思わず真ん丸に見開いてしまう。
急な事で不覚にもドキリとしてしまった。