「安西先生、どうもー」

「はあ」


眉をピクピクとしながら、私は取ってつけた様な笑顔を作る。



「いや、偶然ですよね。隣の部屋同士って」

「ちょ!どこで誰が聞いてるかわからないから、止めて下さい」

「ええ?バレたらまずいですか?」

「快くは思わないでしょう!」

「そうですかねえ?」


綺麗な眉を下げながら、山本先生は首を傾げる。
本当にわからないみたいだ。


「変な噂立てられても困りますし」

「変な噂って?」

「同じマンションに入ってく姿見られて同棲とか言われても困りますし」

「ああ。でも、先に同じマンションって言っておけば誤解ないじゃないですか」

「…まあ、そうですけど」



前を見ながら、少しだけむすっとすると急に腕が引かれて体勢を崩しそうになる。
驚きながら山本先生に抗議しようと、顔を上げたら。


想像以上に近くに山本先生の顔があって、ドキっと心臓が跳ねた。