「ただあんまし気分のいいモンじゃねぇぞ。」
「う…うん。」
「俺の親さ。なんつ-の。カタギじゃねんだ。」
カタギじゃねぇって言うのはつまり…
「それで昔っから友達なんて居なくて
遊んだりするのはいっつも弟だけだった。
まぁ世間から言わせれば俺は跡取りだし。
皆近寄りたくねぇわけよ。
それで俺、自分がこんな家に産まれちまった
ってのがすげぇ嫌になって家に帰らなくなった。
そしたらさ、ある時に親父からいきなり
縁を切るって言われたんだ。」
雄飛はそこまでをいっきに話した。
そして少し悲しそうな顔をして言った。
「弟がさ、俺が跡取りになるから兄貴を
自由にしてやってくれって親父に言ったんだ。
跡取りは2人もいらねぇだろって。
だから俺とは縁を切るって。そんでこの
マンションが最後の贈り物。」
あたしは言葉が出なかった。
と言うより、何て声をかけていいかのかが
分からなかった。
「おい。」
「はっ!!はい!!」
「ふっ。何で敬語なんだよ。」
そう言って笑った雄飛は、
今まで見た誰よりも綺麗な顔をしていた。